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19MAGAZINE#2025.9

竣工の夏!岩手&沖縄事例紹介

 岩手を拠点に18県と一カ国(台湾)でプロジェクトを進めてきた私たち。この夏もたくさんの案件が竣工しました。一挙に解説します。

銀河ブリッジ(旭工業様研修棟)@岩手県花巻市
 東京都荒川区に本社を置き、埼玉県上尾市、岩手県花巻市の3拠点で事業を展開する精密板金加工の旭工業様。今回は花巻工場の敷地内に新設された研修棟の設計を担当しました。社長様にお会いしてからわずか1週間後、花巻出身の童話作家・宮沢賢治に着想を得て「銀河ブリッジ」というコンセプトを提案。童話にも登場するメガネ橋をモチーフに、建物前面にはレンガ造りの三連アーチをデザインしました。この研修棟は、本社と工場をオンラインでつなぐ会議や研修の場として、また社員同士の交流、さらには地域やお客様に会社や技術を知っていただく拠点として、多様な「橋渡し」を担う場所になりますように、という思いを込めました。そして社長のお名前「橋本」にも重ねたダブルミーニングです。
 8月末にお引き渡しを終え、9月から本格的に活用いただいています。花巻インターチェンジを降りてすぐ、道路からご覧いただける「銀河ブリッジ」。ここから多くの人や出来事を橋渡しして頂けると嬉しいです。

宮沢賢治の童話に出てくるメガネ橋を模した研修棟「銀河ブリッジ」

山羊飼育施設(日本ヤギ様)@沖縄県名護市
 ジューク最南端の案件として、会社紹介の際によく話題にしていた日本ヤギ様。「え?沖縄?」「え?ヤギ小屋?」と皆さんからナイスリアクションをいただき、アイスブレイクの鉄板ネタでもありましたが、このたび無事に竣工を迎えました。名護市の山中に位置する飼養施設は、高床式で風通しが良く、糞尿を効率的に仕分けられる仕組みも備えています。
 日本では沖縄の郷土料理のイメージが強いヤギですが、ハラル規制にも抵触しないことから、世界的にはポピュラーな食肉です。「臭みやクセが強い」という印象もありますが、その要因は飼料にあるとのこと。日本ヤギ様では独自の発酵飼料を活用し、臭みの少ない食べやすい山羊の飼育に成功されています。
 沖縄では家庭で飼育されることが多かった山羊ですが、生肉としての衛生・流通ルールは未整備で、ペットでも家畜でもない中間的な存在でもあります。そうした「ルールなき世界」でひたむきに命と向き合う寺内代表の姿に、心打たれました。社名に掲げた「日本」を背負い、日本から世界へ羽ばたいていく日本ヤギ様の今後が楽しみです。

風通しのよい高床式のヤギ小屋

清水寺様庫裡改修@岩手県盛岡市
 そして最後にご紹介するのは、ジュークでは珍しい一般住宅の改修です。今回はデザイン性の高い水廻り(トイレ・浴室・洗面室)の3点改修のデザインを担当しました。広く立派ながらも、寒さの残る昔ながらのタイル張りの浴室。洗面室も広さはあるものの持て余してしまい、せっかくの空間を活かしきれていませんでした。奥様はお仕事柄在宅時間が長いため、より快適に過ごしていただける空間を目指しました。
 配管の位置は変えずに計画しつつ、全体の広さを適切にリサイズ。余剰スペースにはランドリールームやドレスルームの機能も加えました。さらに窓を一箇所増設し、明るさを取り込みました。アクセントには、ウィリアム・モリスの壁紙を採用。住宅設備からフックなどの細かい備品に至るまでデザイン性を追求でき、提案力を磨く貴重な機会となりました。

ウィリアム・モリスの壁紙がアクセント
ドレスルームの機能も追加し、快適さをプラス

ジューク最南端の設計プロジェクト
〜日本初の食用肉ヤギ飼養施設@沖縄〜

 スタッフ青木の友人から紹介されて始まった「ジューク最南端プロジェクト」。本社は岩手にありつつ、いまや18県+1カ国(台湾)で活動している私たちですが、日本ヤギ様からお話をいただいた時は、正直とても驚きました。「え?沖縄?ヤギ小屋?」最初に耳にしたときの感想はそんなものでした。計画地は沖縄県・名護市の山中。Googleマップでもピンが立たないほどの場所です。着工前に訪れたときは一面が緑に覆われ、土地の全景はまったく見えませんでした。

馴染みの薄いヤギ肉を全国へ 
 沖縄ではヤギは「ヒージャー」と呼ばれ、古くから郷土料理に欠かせない存在です。ただし香りが強いため、地元の方でも好みが分かれるそう。そこで、日本ヤギ様は独自の発酵飼料を開発。臭みを抑え、誰でも食べやすいヤギ肉の飼育に成功しました。

 実際に口にすると、ジビエのようなクセはなく、むしろ牛肉に近い食べやすさです。しかも低脂肪でヘルシー。沖縄料理店に限らず、ステーキを扱うレストラン向けの流通を目指しています。 

 ヤギ肉はハラルの規制にも触れず、世界的にはポピュラーな食材です。中華圏で「羊肉」と表記されるものの多くは、実はヤギ肉なのだそう。ラムやマトンとは別物です。言われてみれば、私たちも気づかず口にしていたのかもしれません。沖縄だけでなく、本土でもインバウンド需要が見込めると感じました。

ルールなき世界に挑む
 代表の寺内氏は栃木出身。琉球大学に進学後、沖縄でゲストハウスなどを手がけました。現在は新しい挑戦として、食肉用ヤギの飼育に取り組んでいます。

 従来、沖縄ではヤギは家庭で飼育され、祝い事で食される存在でした。そのため精肉や流通に関するルールは未整備です。沖縄独自の習慣も色濃く残っており、その中でスタンダードをつくろうと取り組む寺内氏の姿勢に強く心を打たれました。

 また、沖縄の気候条件も大きな課題です。高温多湿の環境では、風通しと高床式の構造が欠かせません。床下で糞尿を分ける仕組みにより臭気を抑えることができ、さらには糞は飼料として再利用できます。循環型の工夫に感心しました。ヤギの発酵飼料は味噌や醤油に似た香りで、日本人にとても馴染みやすく感じました。

畜舎特例法を活用
 沖縄独自の時間の流れに悩まされながらも、この夏、無事にヤギ飼養施設が完成しました。今回は通常の確認申請ではなく、「畜舎特例法」を活用。施主が「畜舎建築利用計画」を作成し、知事の認定を受けることで建築基準法の適用が免除されます。その結果、特例基準で建築が可能となる仕組みです。普通の設計業務ではなかなか触れることのない制度で、とても勉強になりました。

 ここから多くのヤギを育て、日本ヤギ様は社名に掲げた「日本」を背負って世界へ羽ばたこうとしています。販促活動も含め、設計だけでなくブランディングの面でも一緒に力を発揮していきたい――そう感じさせられる現場でした。

お盆休みはアリかナシか

 今年はお盆中に沖縄、台湾に出張してきました。お盆中の出張は考えてみたら初めてでした。

お盆休みは各自判断で

 創業時より、当社ではお盆休みを取り入れていません。どちらかといえば私は信心深い方なので、墓参り、祖先を敬う、里帰りを否定するどころかきちっとこなす方です。ではなぜオフィシャルにお盆休みを設けていないかというと、墓参り・里帰りに遠路遥々大移動するようなことはなく、日帰りでお墓参りも親戚が集まるにしてもできてしまう環境に私があるからです。

 ここで一気に溜まった仕事を集中してするメンバーもいれば、休むメンバーもおり、お盆休みは各自の判断に委ねています。そして、お盆=日本の風習であり、在籍する中国人スタッフにとっては平日。今年はこ゚縁もあり台湾のプロジェクトが進行中ですが、同じく彼らにも日本のお盆休みは関係ありません。

沖縄→台湾出張inお盆

 兼ねてより取り組んでいた沖縄県名護市での弊社最南端の設計プロジェクトも竣工を迎え、いつ現地を訪問しようかと考えていました。そして台湾にも出張したいがまとまった時間が取れない⋯とカレンダーと睨めっこしていたところ、ちょうど空白のスケジュールがありました。お盆です。ここしかないと空路を検索すると羽田→那覇→台北→羽田はお盆期間中にもかかわらず針の穴を通すように見事通常価格のフライト。約10万円で周遊可能でお盆真っ最中に移動の割には安価で移動できました。出張のパートナーは中国人スタッフなので、日本のお盆関係なしの二人で出張に出かけました。

 夏休みの駅、空港は確かに賑わっていましたが、向かった名護の山中は静かなもので施主からヤギ肉にかける思いや課題を聞き、普段聞くことがない業界の話に刺激を受けました。台風接近のトラブルはあったものの、無事那覇から台北にも入ることができ(その日の午後のフライトから強風のため飛ばなくなったそう)打ち合わせ、視察、新しいお客様との出会いがありました。年間の三分の一は出張していますが、未だこのように出張先で毎日心が動くことがあります。

 お盆は必ず休み地元にいるもの、という考えを少し変えてみると、有効な時間の使い方ができるかもしれない。これが今年の私の夏休みでした。

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 今回紹介する建物は、現在開催中の大阪・関西万博2025に登場した「ドイツパビリオン」。循環経済(サーキュラーエコノミー)をコンセプトとし、「環(わ)=循環」「和(わ)=調和」「わ!=感嘆」という3つの「わ」を体感できるパビリオンです。ドイツで実際に行われている循環経済を、楽しみながら学べる工夫が随所に施されています。

円筒状の木造建築が7つ組み合わさった構造で、ぐるぐる回遊しながら展示を楽しめる

 建築的なポイントは、円筒状の建物がいくつも連なっている形状です。円の重なりが循環を表し、内部の導線もらせん状に設計されています。歩きながら自然と円を描くように回遊できる導線は、まさに循環を体で感じられるものでした。

 素材選びにも徹底した工夫があります。構造フレームには再利用可能な鉄を採用し、ボルトなどのピン接合にすることで解体のしやすさを重視しています。木材は最小限の表面処理にとどめ、解体後もそのまま再利用できるよう配慮されていました。

建物内のいたるところに円形空間

 さらに屋上には緑化が施され、外断熱の効果を高めています。大屋根リングからのぞくファサードも特徴的なデザインとなっていました。雨水を貯める貯留タンクも設置され、トイレや散水に利用可能。自然と共生し、調和を図る技術が随所に盛り込まれています。外構の植栽は、会期後に返却できる「レンタル植栽」となっており、廃棄物を一切出さず、パビリオン全体が循環システムとして完結しています。

 まさに感嘆の「わ!」を体現する、最先端の名建築でした。

自然と共生する都市空間を体験

旅のおしえ
~たくさんの再生可能材~
 「菌糸体パネル」という、これまで聞いたことのない素材に出会いました。キノコの菌糸の強い結合力を活かした、吸音材などに使える再生可能な素材です。循環経済の流れの中で、こうした新素材が生まれてくることにワクワクしました。

 今回ご紹介するのは、大阪万博に設置された「トイレ5」です。外観はまるでおもちゃのレゴブロックを思わせるような、ビビッドでカラフルなデザイン。赤・青・黄色などの明るい配色で、子どもたちも思わず使いたくなるような楽しさがあり、トイレへの抵抗感を和らげる効果もあると感じました。

万博会場に彩りを添えるような、原色のカラーリングが印象的

 全室が個室となっており、性別や年齢に関係なく誰もが安心して利用できるユニバーサルデザインを採用しています。洗面台がない手洗いスペースというユニークなデザインも特徴的で、蛇口から流れた水は地面にあるグレーチングへと落ちていきます。手を洗うだけでなく、足や折り畳み椅子の脚を洗う人も見かけたことから、さまざまな場面で使いやすい手洗いだと感じました。さらに、節水機能や再生水の活用など、環境面への工夫も随所に見られます。

 デザインの楽しさ、安全に配慮した仕組み、そして持続可能性への意識。この3つが一体となった、まさに未来的で万博にふさわしいトイレだと感じました。

オールジェンダーに対応したトイレ
洗面台がない、ユニークな手洗い場

<<おすすめトイレアイテム>> 
 今回おすすめするアイテムは「ミラタック/Tubo」。細い丸パイプで作られており、見た目はとてもスッキリしています。ペーパーホルダー・タオル掛けとして使用でき、お値段もお手頃。ミラタップの発売するミラーと色を合わせてコーディネートするのもおすすめです。

<トイレ5(大阪・関西万博2025)>
 大阪万博は、大阪市夢洲で開催される国際博覧会です。「未来社会の実験場」をテーマに、世界各国から最新技術やアイデアが集まります。2025年10月13日(月・祝)まで開催中です。
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〒554-0000 大阪府大阪市此花区夢洲
営業時間 / 9:00〜22:00
▶︎トイレ研究家・日山のInstagramはこちら! 

 今回紹介する推しおやつのあるまちは「宮城県仙台市」です。東北の中心都市として、ビジネスや観光、そして各地への道中で、多くの人が一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。私にとっても、大学時代から10年以上を過ごしてきた、第2のホームタウンと呼べる大切な場所になっています。

 仙台のおやつと聞いてまず思い浮かぶのは、「ずんだ」を使ったスイーツや、有名な「萩の月」などたくさんありますが、定番をひと通り味わった上でもう1つおすすめしたいおやつが「ふじや千舟 支倉焼」です。

1個ずつ薄紙で包まれている支倉焼は、お土産にもぴったり

 支倉焼は、江戸時代に慶長遣欧使節団としてヨーロッパへ渡ったことで知られる仙台藩士・支倉常長の名を冠したお菓子。ひと口かじるち、クルミ風味の白あんのやさしい甘さがふわりと広がり、どこか懐かしさを感じさせる素朴な味わいです。

クルミの甘さや食感を楽しめる白あん

 このお菓子が誕生したのは昭和33年。当時「ふじや千舟」では他にもさまざまなお菓子を製造していましたが、昭和38年以降は支倉焼ひと筋で勝負。以来60年以上にわたり、看板商品として長く、多くのひとに愛され続けてきたお菓子であることがわかります。

 さらに嬉しいのは、常温で10日以上日持ちするという点。手土産や贈答品としても重宝され、お土産にも最適。仙台駅内の直営店やお土産売り場でも入手できます。長い年別を経てもなお愛され続ける味を、ぜひ試してみてください!

高級感のある化粧箱

推しおやつのあるまち:宮城県仙台市
新幹線・飛行機など交通アクセスに優れ、ビジネスや、プロスポーツ、音楽ライブなど、さまざまな目的の人が訪れます。東北の中では、比較的夏・冬の気候がおだやかで過ごしやすいまちです。

仙台市の公式サイトはこちら

豊かな自然を体感できるオフィス「PS IDIC」@岩手県八幡平市

 今回は「PS IDIC」についてご紹介します。岩手・八幡平の豊かな盛りに囲まれたPS社八幡平工場は、単なる工場という枠を超えた“体験できる建築”のような存在です。木の質感を活かしたあたたかみのあるデザインは、周囲の自然と調和し、訪れる人に安らぎを与えてくれます。

 館内は生産エリアとショールームが一体化しており、ガラス越しに製品づくりの様子を見学できるほか、自社の加湿・除湿システムを実際に体感することも可能です。建物そのものが製品の快適さを伝えるショーケースになっている点も魅力のひとつ。ものづくりの現場を身近に感じながら、デザインと機能の両方を楽しめる場所として、多くの人に新しい発見と体験を提供しています。

株式会社田中組(建設業)@新潟県新潟市

 ジューク創業時からお手伝いしている、新潟市の建設会社「田中組」をご紹介します。これまで本社屋移転をはじめ、デザイン・ブランディング専任人材の育成、採用のアップデート、ユニフォームの刷新など、多岐に渡り取り組みを進めてきました。

 建設業ならではの特色を踏まえ、望月による営業指導も併用。売上アップや若手社員の増員など、具体的なブランディング成果にもつながっています。さらに、創業100年に向けた「100プロ」も継続中。プレ企画として、会社の歴史や過去の事例、これまでの取り組みを集めた企画展にも挑戦しています。

新メンバーのご紹介
 9/1(月)より取締役設計部長として菅原一司を仲間に迎え入れました。一級建築士、一級施工管理技士としての経験と知識を活かし、ジューク一級建築士事務所の体制強化、若手の育成に努めてもらいます。

職業体験を受け入れました
 ジューク初の中学生職業体験を受け入れました。米内中2年の漫画家志望の生徒さんで、自分でジュークを見つけたそう。デザインにも関心を寄せ、ブランドカラーを題材に2日間のワークに取り組みました。

田中組と95年のつながり展
 2026年の95周年に向けたプレ企画として、新潟市の建設会社・田中組様の企画展をプロデュース・デザイン。歴史や事例、SDGsなどの取り組みを9/1(月)から年末まで田中組様エントランスで開催中です。

銀河鉄道の夜
宮沢 賢治(原作)
藤城 清治(影絵・文)
1982年12月 / 講談社

旭工業様の銀河ブリッジ(研修棟)の発想の元になった宮沢賢治の代表作。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語です。登場する名前や地名は、今なお多くのシーンにインスピレーションを与えます。影絵作家・藤城氏が表現する幻想的な世界観と相まって、引き込まれる一冊です。

宝島
2025年 / 日本
監督 / 大友 啓史
主演 / 妻夫木 聡
原作 / 真藤 順丈

岩手が誇るのは大谷だけじゃない。映画「るろうに剣心」でお馴染みの大友啓史監督は盛岡市出身。映画の街・盛岡ではローカル映画祭が活発で、大友監督も足繁く登場します。ジュークマガジン発行日と同じ9/19より戦後の沖縄を舞台にした「宝島」が公開。戦争、今なお続く米軍基地問題を考えさせられます。

●11月末〜12月初旬 社員旅行
●12/5  19CLUBブランディングツアー@東京

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