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コラム

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デザインノート

1年後の信幸プロテック本社屋ビル

平屋→2階建てで、働くルールもアップデート

旧社屋は平屋だったため、1階がエントランス・2階に事務所という空間、使い勝手のイメージは想像が付きにくかったと思います。プランニング段階では、お客様の顔が直接見えず来客の受付対応をどうするか…という不安も出ていました。

しかし、受付ルールを決め実際に新社屋で対応してみると意外と使い勝手が良いと気づいたそうです。旧社屋はエントランスからワンフロアで事務所内が見渡せるので、来客時は事務作業中でも気が逸れてお客様の方を見てしまいます。外的要因で集中力が切れてしまい、再度集中し直すという事が多かったそうです。

新社屋では内線電話などの無人対応でお客様の利便性を損なうことがないよう、スタッフ数名を1階に配置して受付業務を任せ、来客などの際、必要に応じて2階の担当者を呼び出すルールにしました。すると、来客時に途切れていた集中が切れることなく、業務に集中できるようになりました。

建物だけで全ての利便性を賄おうとするのではなく、社内ルールとともに社屋を作り上げていくことで、より効率的でその会社らしさのある新社屋ができると思います。信幸プロテック様はその良い1事例でした。

オンラインミーティング増加による音環境

昨今の新型コロナウイルスの影響でリモートワークやオンラインセミナーなどが顕著に増加しました。オンラインで特に重要なのが電波環境と音環境です。

イヤホンなどの一般的なオンライン機材だと周囲の音を拾ってしまうため、どうしても個別ブースが必要となります。ヘッドセットと指向性マイクをそれぞれが持っていれば解決する問題かもしれませんが、その初期投資にはかなりの費用がかかります。

吹き抜けを作ることで2階と1階の空間のつながりを持たせ、オフィス空間が分断されないような環境づくりができる一方、音もつながるためにオンラインでの打合せがやりにくいデメリットがあります。ウィズコロナ時代では、オフィス内にオンライン用のブースやスタジオがあることが当たり前になっていくかもしれません。

1階と2階をつなぐ吹き抜け
クローズドな会議室は1つ
オンライン対応もできるブース

土間コンクリートの床暖熱仕様

1階の床を土間コンクリートにすることで外からアクセスしやすい雰囲気や、デザイン性の高いオフィス空間をつくることができます。一方で課題となるのが断熱仕様です。

一般的な住宅などはコンクリートの上に床を組んで中空層の緩衝帯を作ることで断熱性能を高めています(その上で床暖房を入れます)が、土間コンクリートでは床が地面に密接しているため東北の冬はとても冷え込みます。そのため今回は温水を循環させるパイプを土間コンクリート内部に埋め込みました。冬場はコンクリート内を温水が流れることで、空間を床からじんわりと温めてくれます。

将来的には太陽光による電気発電で床暖をすることができれば、初期投資だけでランニングコストは抑えることができます。彼らの本業である設備業ならではの視点であり、東北の土間コンクリートには床暖房仕様が必須であると教えて頂きました。

トイレの塗り壁

トイレの壁に「深呼吸」という塗材を用いました。この商材の大きな特徴は消臭・自浄作用があることです。

トイレを利用すると、床や壁に直接的に尿が付着していなくても目に見えないアンモニア成分が大気中を舞います。それらが長年壁や床などに付着することで臭気の原因となります。床の掃除は定期的にするかもしれませんが、意外と壁に付着したアンモニアが臭気を出していることがよくあるのです。

この塗材は壁に付着したアンモニア成分などの汚れを吸収、分解してくれるので嫌なニオイがトイレ内に残りません。さらに自浄作用もあるため経年劣化が起きる心配もありません。お客様からも高評価を頂いており、今後も提案していきたい塗材となりました。

建物の視認性

計画地は県道13号線から東に曲がった通り沿いのため交通量が多く、東外壁面に大きく社名である「SHINKOPROTEC」とサインを入れました。そのサインを見れば新社屋は一目瞭然と考えていましたが、実際は足を運んだお客様が通り過ぎてしまうことが多々あったそうです。旧社屋は周りに高い建物もなく、上部には一目で分かる程の大看板があったため、お客様は迷うことなく会社に辿り着けていました。新社屋には道路からパッと見える大看板が無いため目に止まらなかったようです。

社屋移転では、既存社屋の使い方をベースにスタッフ様の動線など考えていきますが、「来社頂いていたお客様の視認性」という部分までの考慮が足りていませんでした。現在は駐輪場の側壁面にサイン看板を入れて頂き、東西どちらからいらしても視認性を確保しています。

デザイナー

青木俊太朗(一級建築士)

柿澤志保(空間デザイナー)

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