19MAGAZINE#2025.7


デザインスクール2025 開校レポ
デザインで「一段上」を目指す
6月19日・20日の1泊2日にわたり、ジュークアンリミテッド本社でデザインスクールを開校しました。「デザインに長けた会社になって一段上に行こう」をコンセプトに、デザイン経営の取り入れ方を体感してもらう2日間です。本業がデザインである方はもちろん、企画・広報・採用担当の方、経営者直轄部門の方にもご参加いただけるようデザインの具体的なノウハウというよりは考え方のコツをお伝えしています。今回は「デザインを現場で体感してほしい」という想いから、普段からクリエイティブな働き方をしているジュークのオフィスを会場に開催しました。

現役デザイナー達も参加した「知る日」
初日は「知る日」として、デザイン本来の意味やデザイナーとしての心構えをお伝えしました。加藤の講義に加え、参加者同士の活発なディスカッションを通じて理解を深めました。今回は現役で活躍するデザイナーが参加したり他社で活躍するインハウスデザイナーの生の声を聞く貴重な機会を設けました。ゲスト講師は新潟県の田中組(建設業)インフォメーションデザイン室で活躍中の齋藤杏奈さんに、新入社員として入社後にデザインを学び始め、いかにして一人前のデザイナーへと成長したのか、その経験と普段の業務についてお話しいただきました。長年ブランディングでお手伝いしている埼玉県深谷市の建設会社からは、新入社員のデザイナーさんも参加され、様々な視点からの質問や意見も交わされ、より多角的な学びの場となりました。生徒の皆様は具体的なキャリアパスや日々の業務のリアルな側面を知ることができ、大いに刺激を受けたようでした。

思考を凝縮する「考える日」
2日目は「考える日」と位置づけ、デザインの基本要素である“色”に徹底的に向き合うワークを実施しました。まずは各自のテーマカラーを深く考察し、その後、自社のコーポレートカラーやブランドカラーを組み立てる企業ワークを行いました。一人で煮詰まる場面でも、チームメイトとの対話やアドバイスを通じて思考を整理し、アイデアを具体化していきました。このワークを通じて、デザインに着手する前にコンセプトをしっかりと練り上げることの重要性を体感していただきました。加藤が「デザインの前にどれだけ考え抜くかが重要」と伝え、参加者はその本質を掴んだようでした。

帰社後すぐに活かせる実践的アウトプット
最終セッションでは、参加者が各社から持ち寄った具体的な課題に対し、帰社後すぐにアクションに移せるレベルまで精度を高めるワークに取り組みました。販促ツールの企画デザイン、新企画の販促、店舗コンセプトなど多岐にわたる課題に対し、加藤が一人ひとりに寄り添いながらアドバイスを行いました。参加者同士の活発な意見交換やアイデアの壁打ちも、精度向上に大きく貢献しました。結果として参加者全員が完成度の高い企画を持ち帰ることができ、即座に現場で活用できるレベルに到達したことに満足された様子でした。
今後もデザイナーを育成したい企業様、デザイン経営を導入したい企業様のご参加を心よりお待ちしております。
働くことを誇りにするユニフォーム@岩手
〜地元を代表する醸造所 ユニフォームプロジェクト〜
「岩手のブランディングカンパニーと言えば?」と真っ先に思い浮かぶのがべアレン醸造所様。スーパーや飲食店には商品の地ビールが広く浸透しており、地元では「べアレン」「べアレンさん」と称して誰もが知るところです。(以降、親しみを込めて「べアレンさん」と表記)盛岡市北山にある工場では工場見学を行っており、主催するビアフェスでは毎年多くのファンを集めています。ビール自体の品質も世界クラス。スタウト(黒ビール)は世界一を取り、岩手どころか日本を代表する企業です。
ジュークとべアレンさんのご縁は古く、代表加藤がブランディングに出会った15年前、好事例としてよく見ていたのがべアレンさんでした。商品力もさることながら、ブランドガイドラインの浸透、クレドが徹底されており、皆お話しするといい感じの空気感を纏った人ばかり。言葉には上手く表現できないけれど「べアレンっぽい」方ばかりでした。ブランディングを学びたての頃「これが、ブランディングがうまくいっている会社の姿なのか」と感銘を受けたことを覚えています。
きっかけは昨年のジューク企画展
お互いに知っている仲のべアレンさんですが、ユニフォームご依頼のきっかけは、昨年夏に開催したジュークの企画展への来場でした。会場ではブランディングメニューの1つであるユニフォームも一挙公開。設計・デザインだけではないジュークの幅広い仕事内容に興味を持っていただきました。
オリジナルグッズをたくさん展開している印象のべアレンさんですが、工場内で製造現場のスタッフが着用するユニフォームを導入したいとのこと。過去にも何度か工場スタッフのウェアを統一しようという動きはあったものの、導入には至らなかったと嶌田社長は言います。ジュークは一方的に提案することはなく、一緒に考えながら形にしていく共創スタイルであることをご説明しました。
ブランドの原点で着用
この春にユニフォームプロジェクトがスタート。メンバーは社歴が浅い若い20代のスタッフ。嶌田社長も合流し「べアレンらしさとは何か?」と「ユニフォームを導入する意味」を考え、スタートラインを揃えるキックオフを開催。そこで社長の口から語られた「これを着てここで働くことを誇りに思って欲しい」という思い。伝統あるドイツクラシックスタイルを愚直なまでに貫き、岩手・世界を代表するブランドに成長したが、そこに至るまでには数々の大変な時期を乗り越えてきたであろうその言葉には重みがありました。べアレンブランドの原点であるビールづくり。そんな現場で着用されるユニフォームです。
若いスタッフとの共創
感心したのはミーティング中に「さぁ、どうしようか?」というシーンになると、さっとブランドガイドラインやクレドカードを取り出したり「嶌田はいつもこう言っています」と語る若いスタッフ。こうして脈々とべアレンらしさが引き継がれていることを毎ミーティングで感じています。一朝一夕では成し得ないブランドづくり。このように「らしさ」を普段から理解できているため、迷いが少なくプロジェクトは順調に進行中。現在サンプル作成の大詰めです。秋にお披露目予定でしたが、この夏にお披露目ができそうです。

ブランディングに必要なのはキュレーション力
昨年、自社の事例を集めた企画展をやってからというもの、企業ミュージアム、周年イベントでの歴史コーナーのプロデュース依頼が増えました。9月には新潟の建設会社で95周年企画。来春には滋賀県で新社屋内に技術と会社の歴史をミックスさせたミュージアムがお披露目予定です。
昨年企画展の開催にあたり「私たちって何?」を深く考えました。やってきたこと、これからやりたいこと、自分たちらしさ、を分解して組み直し表現したプロセスでした。紙、ウェブ、動画もブランディングの発信・浸透には必要ですが、「体感」に勝るものはありません。コーナー作りは百聞は一見に如かず、を大切にしているジュークらしいサービスになりつつあります。
事例をどう使うか?
ブランディングという一言では解説しきれない概念をお伝えするのに苦労してきました。抽象的で分かりにくいサービスです。私たちが何をやっているのかが分かりやすく、お客様に届きやすくなったのは事例が増えてからです。ブランディング×建築。会社で大事にしていることを整理しながら、グラフィックで見える化し、様々なツールに展開。建物ができる間は、ツールを使って自分たちらしさを社内外に発信を続ける。そして建物や空間が完成したら、最強集客ツールとして長年使い倒してもらう。そんな中長期期間の構想なので好事例としてお伝えできる状態になるのも時間がかかりました。
2024年夏、これまでの事例を集めた企画展を地元岩手で開催しました。私たちがどんな仕事をしているのか。どんなサービスで、どんな効果を生んでいるのか。「コーポレート」ブランディングというだけあって、会社は100社あれば100通りです。何一つ同じ事例はありません。それでも事例を使って何を知ってもらいたいのか?を深く掘り下げた結果「コーポレートブランディングと建築展―地域と未来をリードする会社とジュークの仕事―」としました。
私たち自体もブランディングカンパニーの一社として事例の一部として登場。最強集客ツールとしての建物・空間を武器にブランディングを続ける企業事例を紹介。ついで、建物の次に面積が大きい=効果が高いブランディングツールであるユニフォームの一覧を展示。現在進行中のプロジェクトをチラ見せして、創業時から発信を続けている源である社内報のアーカイブを展示。全国をマーケットに活動する広さを来場者にも体感して欲しく「どこからきましたか?」マップを作成し、付箋やシールを貼ってもらうエリアを設けました。
こんな感じで昨年は「私たちって何?」を一生懸命考えてみたわけです。そしてどう表現するか。常設でなくともより多くの方に体感し、印象に残す方法として空間・コーナーとして出現させる。建築に比べてローコストで作ることができるので新築、改修の予定がない方でも気軽に着手できるブランディング手法としてオススメできます。

今回紹介する建物は「京阪宇治駅舎」です。1995年に竣工した駅舎で、設計は京都生まれの建築家・プロダクトデザイナーの若林広幸氏です。エリアの持つ特徴をダイナミックに表現したインパクトのある駅舎でした。

宇治川の防波堤を超えたすぐの場所にある駅舎は対岸から見た時も一目で目に付くほど印象強いファサードでした。コンクリートの円形がいくつも連なり、自然豊かなエリアにそびえたつ幾何学模様の建築が独特な存在感を放っています。円にこだわるのはおそらく近くに平等院鳳凰堂があることがデザインに影響しているのではないかと思います。

実際に内部に入ってみると、円形という形がきれいに外の風景を切り取っており、構造上の梁が水平方向に出ていても全く違和感を感じません。川岸ならではのひんやりとした風が建屋の円形を通り抜けていくのですが、35°もあった京都の暑さを一瞬でも忘れられるような居心地の良い空間でした。コンクリート造にも関わらず、自然豊かな雰囲気が建屋の内部にも広がっており、閑散とした印象を受けないのがこの円形の形状の特徴なのだと感じます。 天井にはR形状のままでガラスブロックが配置されており、直射日光を遮りつつも乱反射で空間を明るくするという工夫も感じられました。

コンクリートという強さを持ちつつも、形状とガラスの工夫で周辺環境に見事に調和した名建築でした。
旅のおしえ
~アプローチの明暗~
駅のホームから出ると円形のヴォールトがいくつも待ち構え、明るく開放的な空間が広がります。駅の外に出るために一旦地下に潜り、その開放感を維持しつつ一転して暗い空間へ、そして宇治の自然豊かな街並みにつながる動線にワクワクしました。


今回ご紹介するのは国立競技場の近くにある千駄ヶ谷駅前公衆トイレです。谷尻誠(SUPPOSE DESIGN OFFICE)が設計ししました。コンクリートの箱が地面から50cm浮いており、何があるのか思わず中を覗きたくなるような見た目です。

入口から中に入ると、正面に洗面台、左側に女子トイレ、右側に男子トイレがあります。壁はコンクリートで作られていて重々しい印象ですが、6mほどの高天井にトップライト(天窓)が設けられているおかげで自然光が差し込むように設計されており、開放感がありました。

トイレの個室には上質なホテルにありそうな真鍮のウォールランプが付いており、公衆トイレとは思えないような設えでした。
個室前を通って奥に進むと将棋会館があることで知られる千駄ヶ谷にちなんで、藤井聡太さんらの写真が展示されていました。トイレ内の展示は斬新なアイデアだなと感じました。外観のインパクトのあるデザインとは対照的な室内の上質なデザインのギャップに魅了されました。

<<おすすめトイレアイテム>>
美しい天然大理石のマーブル模様の壁付フック「EX.T/DOTS」。高級感のあるデザインでトイレ空間のアクセントに活躍します。コートフックなど空間を彩るのに最適なアイテム!

<千駄ヶ谷駅前公衆トイレ」>
谷尻誠によって設計、2020年10月に完成しました。東京オリンピックを見据えた都市の再整備の一環として、旧トイレをリニューアルする形で作られました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷1丁目35-7
営業時間 / 24時間
▶︎トイレ研究家・日山のInstagramはこちら!


今月号は世界中の富裕層を魅了する、圧倒的存在感と快適性を誇るイタリアンラグジュアリー家具ブランド「Edra(エドラ)」をご紹介します。

Edraは1987年にイタリアのトスカーナで設立されたブランドです。最上級のくつろぎと流行にとらわれないエレガンスさがコンセプト。革新的で個性的なデザインの家具を打ち出すことで有名なブランドです。一見どう使うのかわからないような独特なデザインで、オリジナリティある家具を作り出しています。例えば、鉱石のような不思議な色と形をしたラウンジチェアや3色の板を組み合わせて作ったダイニングテーブルなど、あまりにも個性的なデザインは見る人に対して強烈なインパクトを残します。他にはないデザインを求める人に良いでしょう。

日本人デザイナー梅田正徳さんの世界的に知られている代表作「月苑(キキョウ)」は1988年に開催された「KAGU・東京デザイナーズウィーク展」に出品されたもので1990年にEdraより製品化されました。デザイナー自身が好きだという桔梗(キキョウ)をモチーフにした作品です。正面から見ても側面から見てもお花の形そのままで美しく、肌触りの良いファブリック生地です。後ろ足には緑色のキャスターがついており移動もしやすい形状になっています。高い技術力とパフォーマンス力を融合しているこちらの作品は、Edraの代表作のひとつとして世界中に愛され続けています。

「Edra」を実際に見るなら…
・Spazio Edra Tokyo Aoyama by LIVING HOUSE…〒107-0062 東京都港区南青山3丁目4-8 1F 2025年7月3日オープン!
・LIVING HOUSE. Spazio Edra Osaka…〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江2丁目10-8 3F (定休日:火曜日)
▶︎デザイナー・赤坂のInstagramはこちら!


サイボウズのワークスタイルを具現化したユニークなオフィス@日本橋
今月はサイボウズの東京オフィスをご紹介します。日本橋にあるその空間は「動物園のような多様性」をテーマにした、自由で楽しい雰囲気がとても魅力的。静かに集中できる場所やにぎやかに話せるエリア、リラックスできるスペースなど、まるでいろんな生態や特徴をもった動物たちが自分らしく過ごせるような空間です。さらにおもしかったのは、会議室の名前が世界中の港町になっているところです。サンフランシスコや神戸など、国や文化の違いを超えてつながる「港」のイメージがグローバルな働き方にとてもマッチしていました。社員一人ひとりが自分らしくいられる工夫が満載でオフィスに対する考え方が変わる、刺激的な会社見学ができました。


6歳3ヶ月…6年の成長を見ていただき、ありがとうございました


〜工場編〜 ブランディング×建築展
7/9〜11に幕張メッセで「ものづくりワールド東京」に出展。昨年夏に岩手で開催した企画展形式の事例展示です。“ものづくり”にちなみ、工場・倉庫・ユニフォームの事例にフォーカスした展示内容です。

19CLUB新会員のご紹介
7月より静岡県焼津市の鋳造業「株式会社武村鋳造所」様が入会されました。6月にブランディング×建築の事例見学で岩手にお越しになり、信幸プロテック様・ニュートン様の社屋見学をされました。

田中組95周年プロジェクト発足
新潟市の建設業・田中組様の新プロジェクトが発足。ブランディング専門部門の体制変化をしながらの当プロジェクト。田中組らしさに再確認と共に、建設業の枠を超える企画展をプロデュースします。


●10/23-25 19CLUBブランディングツアー@台湾
●12/2 19CLUBブランディングツアー@東京