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コラム

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DEO NOTE(社長ブログ)

DEO NOTE|サポーズデザインオフィスの本からジュークを考える

厚さにビビってなかなか手をつけられずにいましたが、読み始めたら夜にじっくり読むパターンで2日間で読み切りました。サポーズデザイン20周年を機に発行された当書。26歳でサポーズデザインを作った2人の軌跡をそれぞれの視点で書かれてます。 私は今年は自邸建設をします。昨年も仕事の合間を見ては担当の柿澤さんとプランを進めてはみましたが、互いの忙しさも相待って進みが悪く、このままではいけないと何か参考になる進め方はないものか?と本に救いを求めた次第。最近ではオフィスや商店デザインの印象が強いサポーズデザインですが、多くの住宅を手がけているので進め方・プランの考え方のコツがないかな?と思って読み進めました。

建築オタクだった谷尻さんは新建築・住宅特集・GA JAPAN(日本でアカデミックな建築媒体はこれだけ)に掲載になることを夢見ていました。手がけた住宅は1棟目から見た目にもデザイン性がありいかにも建築家の家、という印象です。しかし誰だろうと経験値の積み重ね。前半では反省や葛藤が見受けられました。そこからジュークでも大事にしないといけないな、と思ったことを2つ書きます。

「思いを分解する」

顧客には言葉にできない要望がある。例えば「個性的な家がいいんだよね。例えばログハウスみたいな。」こう言われたら、皆さんはまずログハウスの事例を調べますか?谷尻さんは「個性的」の方に注目します。相手は素人。ログハウスの他に個性的な家の引き出しがないので、ログハウスと表現したまで。他とは違うデザインを見せて、こんなのはどう?こっちは?と導いてあげた。これが1棟目だったそうです。

相手は素人だからプロに依頼します。受ける我々はプロです。相手は分からないから私たちに頼んでいる、ということを決して忘れてはいけません。数少ない言葉の一端から世界を広げてあげることがプロの仕事です。ジュークではどうでしょうか。トップファクトリーは初めての工場建設をする方に寄り添います。ブランディングだって初めての経営者ばかり。「初めてをどう導けるか」=私たちの力量です。

いきなり完璧な人はいません。私も前職時代のコンサルを振り返るとかなり荒削り。言い方がきつかったな、とか、無理やりこっちのレールに乗せようとしていたな、と反省することが多々あります。その時の私の気持ちは「こっちの方がいいに決まってるんだから!なんで分かんないの?」とイラだつ気持ちが前面に出ていました。特に社内ブランディングはパワースタイルで押し切ったこともしばしば。結果、ほぼケンカ。その一件以来、なんだか疎遠になってしまった同僚もいます。これは今思うと本当に反省。幼さと未熟さ故のことなので、もし会うことがあったら一言謝りたいな、と思います。

失敗と反省の積み重ねで洗練されていきます。こればっかりは当人にしか分からない感覚です。今言えることは、葛藤しながらもやってみる。一定期間経って振り返った時に気がつくことがあるはずです。

「伝える」まで設計する

住宅だけでなく、サポーズで一貫して大事にしているのは「設計と言葉」です。(以前会長も谷尻さんの話でこれを言ってました。覚えてますか?)「伝えることまでが設計だ」と本書では書かれています。当社の場合、全員がこれを肝に銘じないといけません。ブランディングでもデザインでも設計でもです。

施主の思いを汲み、予算に間に合うような構造で、かつデザイン性も良く。しかもオープンハウスも考え抜いて一般の人に広く見てもらえるように家具の期間限定ショップとしてオープン。200組を集めるイベントに。本を読んでいると、ワクワクした1棟目のエピソード。

それでも住宅特集には載らなかったそうです。住宅特集の編集者にボッコボコにされたとか。なんでそのデザインなんですか?なんでその構造を選んだの?他の方法はなかったの?なんで?なんで?なんで?の質問責めにしどろもどろになったそう。 そこで気がついたのは確固たるコンセプトがなかったこと。個性的な家をローコストで作る方法を考えてできただけだったことです。竣工写真もプロに撮影してもらったけど生きた写真にはならなかったそうです。

一言でスパン!と言い表すもの。それを軸にデザインする。考えをまとめる。ジュークでもやらなければならないことです。伝えるには言葉が欠かせません。伝えることを諦めない。納得がいくまで自問自答する。私は効率を求めて「まずはこれでぶつけて様子をみよう」とジャブを打つクセがついてしまっています。本書を読んで、そんな進め方ばかりじゃいけないな、と襟を正しました。DEO(デザインエグゼクティブオフィサー)と名乗っている以上、デザインへの執念は忘れずにいきたいです。

他にも

  • デメリットを楽しむ(悪条件な土地ほど個性)
  • 予想通りのものに感動はない(手がけた〇〇みたいに、というのは谷尻さんにとって一番つまらないオーダー)
  • 依頼主と共犯者になる(上下関係じゃなくクライアントともチーム)

など、設計に限らずジュークでも心がけるべきことが多かった当書。全部書くとネタバレになるので、興味を持った方は読んでみてください。私はこんな感じで本を読んで考え方の答えあわせをしたり、初心に返ったりをしています。

自邸の設計。今年はこれを通して、一級建築士事務所も併せ持つジュークがどんな設計・デザインプロセスを経て形にするのか。それを自分ごととして考える1プロジェクトにしたいと思います。

サポーズデザインの働き方の遍歴も参考になることが多かったですが、それはまた次の機会に書きます。

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