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コラム

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19MAGAZINE#2023.10

トイレ研究家・日山莉愛の1年の活動を振り返って

3K問題と研究のきっかけ
 公共のトイレと学校のトイレは3K(臭い・汚い・怖い)と言われており、あまり良い印象を持たれていません。不気味なイメージで近寄りたくないという人も多いようです。
 水回り商品を提供しているTOTOが行った調査でも“学校のトイレに行くのが憂鬱だと感じている生徒は多い”ことが明らかになっています。私も小学生の頃、トイレに行くのが憂鬱でした。日常的に利用するトイレが使いにくい場所になってしまっていることは問題だと感じています。
 2018年に日本財団が立ち上げた「THE TOKYO TOILET」プロジェクトでは渋谷区17カ所の公共トイレを建築家、デザイナーが手がけました。多様性を受け入れる社会の実現を目的に、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレです。このプロジェクトでつくられたトイレに3Kの要素は無く、デザイン性の高いトイレばかりでわざわざ行ってみたくなります!こういった事例を見ていると、トイレの嫌なイメージは空間デザインで変えられると思いました。「わざわざ行ってみたくなる、見た目が美しいトイレってどんなものがあるだろう?」「有名な建築家はトイレまでこだわっているのかも」と探求してみたくなったのが、トイレの研究を始めたきっかけです。今では建物に入るとトイレのピクトグラムを自然と探してしまうようになりました(笑)

(トイレ研究家・日山莉愛

トイレの重要性
 トイレが綺麗だとそれだけで気分が良くなりませんか?
 私は少なくともトイレが綺麗な飲食店や商業施設に行くと好感が持てます。実際に、どんなに美味しい飲食店でもトイレが汚ければお客さんのリピート率に悪影響を及ぼすというデータもあるようです。トイレは1人きりになる空間なので、余計に細かい部分に目がいくといわれます。トイレに常駐することはないですが、普段から使う場所で、誰もが利用する可能性があるからこそ、デザイン性を持たせるべきだと感じます。

(商業施設の綺麗なトイレの手洗い)

維持管理が一番重要
 約1年、公衆トイレや商業施設のトイレなど非住宅のトイレを見てきました。どんなにデザイン性の高いトイレでも、維持管理がなされていないと意味がないと感じました。首都圏のあるトイレを訪れた際、ほとんどの個室が汚く、利用ができませんでした。
 「THE TOKYO TOILET」プロジェクトは渋谷区を中心に日本のトイレの印象を変えようと進めたプロジェクトです。公衆トイレを建てて終わりではなく、その後の維持管理も一貫して行われています。清掃員にはデザイン性のあるユニフォームを着用してもらい、楽しく仕事ができるように配慮されています。このプロジェクトを題材にした映画「パーフェクトデイズ」が今年公開されました。主演・役所広司さんが365日休まず1日に2回、公共トイレのメンテナンスを行う清掃員を演じます。この映画がきっかけで、清掃中に街の人に話しかけられるようになったということもあったようです。
 こういったプロジェクトを通して私自身、維持管理してくれる人がいるから気持ちよくトイレが利用できていると再認識できました。

(「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの清掃員)

 コミュニケーションが研修・営業にも繋がるバディ制度。ぜひ取り入れてみてください!

→トイレ研究家・日山のInstagramはこちらから←

 現在、本社建替プロジェクト進行中のユタカ電業株式会社様からシアバタースキンケア製品「イルシア」が発売。発売日9/28に社内記念イベントが開催され社長様とメンバーから発売までの1年間の想いや製品のコンセプトなどが伝えられました。

スキンケア製品デザインの経緯
 鉄道情報通信機器製造がメインのユタカ電業ですが、鈴木社長様から「アフリカ・ブルキナファソのシアバターを使用した自然派の化粧品を販売したい。その際はパッケージデザインをお願いしたい。」とお話を頂いたのは今から2年以上前のことです。そこからユタカ電業のスタッフをメインにイルシアチームが立ち上がりました。

デザインは容器選びから
 チームメンバーで製品のコンセプト・ペルソナ・見せ方などを時間をかけて話し合ってきました。デザイン制作として一番最初に取りかかったのは容器選びです。販売する化粧水とクリームそれぞれの成分や量に合わせていくつかの候補に絞りながら、東京のコスメ展示会に実物を見に行きました。当初ほぼ決まっていた個性的な形の容器から、配送面でのコスト・環境配慮を考えて現在のシンプルな薄型の容器に決まりました。

プロダクトデザインに込めた想い
 イルシアが掲げる「クリーンビューティー」は内面から湧き出る美しさ、人・地球・環境にやさしい未来を紡ぐ想いを込めたフィロソフィーです。
 “紡ぐ”を表現したシンボルマーク。メインカラーに定めたシアバターの色のアイボリー。水滴マーク(高純度・安全な原料を使用)ウサギマーク(動物実験なし)地球マーク(持続可能な環境に貢献)。これらは、どれもイルシアの伝えたいメッセージを目にみえる形として表現したデザインです。

→イルシアの公式サイトはこちらから←


ジェンダー、LGBTQ+…あと10年で会社は変われるのか?

中学生からジェンダーに関する取材を受けました
 岩手大学教育学部附属中学校の1年生からジェンダー、LGBTQ+に関してのインタビューを受けました。5名の中学生が来社してくれて、質問に答えたり意見交換を行いました。

 中学生に聞かれた質問を挙げておきます。

・LGBTQにどのように向き合うべきか(当事者の場合、そうでない場合)
・なぜLGBTQを支援しようと思ったのか
・レインボーマーチではどのような取り組みを行なっているのか
・なぜ、男女格差が起こるのか 男女格差を無くすために必要なことは何か
・「トランス男性」「トランス女性」などという言葉をどう思うか 必要か否か
・トランスジェンダー職員の女性トイレ利用裁判についてどう思うか
・女子の学生服はスカートからズボンと選べるようになってるのに、男子の制服は選べないことについてどう思うか
 11、12歳の子達からの質問です。企業の皆さんはどれくらい知っていて、持論を持ってお話しできますか?各人が研究テーマを持って、今回はジェンダーやLGBTQ+に興味がある生徒さんがチームになっているので、もちろんそれ以外のことにも興味を持っている生徒さんたちも沢山います。が、中学生からのオファーでこんな話をする日が来るとは想像しておらず、びっくりしたのと、リテラシーの底上げ感を感じました。

地方中小企業は10年で変われるか?
 ジュークアンリミテッドでは2020年6月にally宣言をしました。allyとは「同盟・提携」を意味する英語の「alliance(アライアンス)」からきた言葉で、LGBTQ+を理解し支援する人を指します。LGBTQ+コミュニティに対して寄付をしているとか、活動を共にしている、という支援の仕方ではなく、当たり前として受け入れて共に働いたり、働ける場所(企業)を増やしていけたらいいな、という活動です。そのためにallyと名乗ったり、今まで機会がなかった企業に知ってもらうきっかけ作りとして「見える化」をしているイメージです。仕事柄、法人がお相手なんですが、企業より先に中学生からオファーが来るとは驚きです。

 生徒さん達と色々お話をすること1時間。最後に私から質問しました。

 「みんなが社会に出て働くようになるにはあと10年。働き先を選ぶ時に、ジェンダーとかSDGsとかよく分かってないところは選ばないでしょ?」

 満場一致で頷いていました。やばいです。あと10年。この5人は氷山の一角で、全国各地で同じように興味を持っている生徒さん達がいる。「SDGsって何?LBGTって何?うちには関係ない」なんて言ってる場合ではないのです。新卒採用といえば大学生、高校生が対象ですがその下の中学生、小学生に目を向けるとこれだけ色んなことを知っています。それが10年後、昭和生まれと一緒に働く…そりゃ価値観も合わないし、話も合わないですね。私は10年の間に、ブランディングを通じてどれだけally企業を増やすことができるんでしょうか。

 今日一緒にインタビューに参加してくれたジュークの元スタッフ加藤まい(2019年盛岡市議会議員選挙にレズビアンを公表して立候補し、25歳で初当選)曰く、岩手ではallyを名乗っている弊社、パートナーも家族同様のルールで対応してくれるように会社規定を改編してくれている企業が1社。この2社しか企業としてはLGBTQ+への理解を分かるようにしているところは知らない、とのこと(他にもいらしたらすみません)。当事者がいない限りは社内規定の改編までは大変だと思いますが「知る・理解をする」ということはどんな企業でもできるはずです。

 具体的な数字を設けずに、理解が広まればいいな〜くらいに思ってallyを名乗っていましたが、今日のインタビューをきっかけに「あと10年でどれだけally企業を増やせるのか」少し具体的に考えてみようと思います。

【NEWS】ジュークの最新ニュース

「いわてつながらナイト」に吉浜登壇
 いわて若者カフェ主催、若者限定の交流会「いわてつながらナイト」のゲストスピーカーとして吉浜が登壇しました。留学、地方創生、ジュークでの仕事など自分の体験談を語り、参加者の方々と交流しました。

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中学生からジェンダーについて取材
 岩手大学教育学部附属中学校1年生からジェンダー、LGBTQ+に関する取材を受けました。5名の中学生が来社し、意見交換を行いました。子ども達の意識の高さに岩手でのally推進の必要性を改めて感じました。

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社会人インターンシップを受け入れ
 設計・営業の社会人インターンシップを行いました。異業種から参加の2名が希望職種に沿った課題を行う2日間のカリキュラム。最後は皆の前でプレゼンテーションをしてインターンシップを締め括りました。

→インターンシップのインタビュー記事はこちら←

【INFORMATION】

●10/26-27 ベンチマーク視察団@広島
●12/5 加藤セミナー「KITAKAMI O2の舞台裏」@北上(小田島組)
●12/6 ベンチマーク視察団@東京

 今回紹介する建物は広島県大竹市にある「下瀬美術館」建築家・坂茂氏が設計した美術館です。見所がたくさんありワクワクしながら全体を見学しました。

(自然豊かな周辺の景色が映し出される外観)

 一番インパクトが強かったのが、建物外周部のほぼすべてに鏡面のミラーフィルムを用いていたデザインです。瀬戸内海や町・山・島などに囲まれている立地条件の中で、周囲の風景を鏡を使い映し出すことで建物自体の存在感を消し、風景に溶け込むようなアイデアと周辺環境に対するリスペクトを感じます。

(放射状に伸びる特徴的な柱)

 内部には構造としても機能している特徴的な柱が出迎え、瀬戸内海が一望できる開放的な空間が広がります。館内に入るまで中の様子が全く見えず、そのギャップによって一気に建物に引き込まれました。

(水辺に浮かぶカラフルな展示室)

 外部すべてが鏡面で存在感を消しているかというとそうではありません。水辺に浮いているような展示室は1つ1つのキューブがカラフルな配色で、メイン建物が存在感を消している分、美術館機能として重要な展示室にスポットを当てている印象です。貨物船のコンテナを彷彿させるデザインが海の近くに立地しているという土地の要素を生かしているのだと思い、まさに瀬戸内海という自然豊かな環境があったからこそできあがった名建築だと感じました。

旅のおしえ
エミール・ガレの庭のグレーチングデザイン~
 水辺のグレーチングの溝にはカラフルで綺麗な石がはめ込まれ、アクセントに。無骨さが無くなり、愛らしいデザインになっていました。

世界的建築家の隈研吾氏が手掛けた「浴・食・泊で自然を感じる複合型リゾート」

(豊かな自然を眺める円形のサウナ室)

(水深120cmの水風呂)

 「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」を今回はご紹介します。人気のサウナマシーンメーカー“METOS”の「ikiヒーター」を中心に、焚き火を囲むような円形のサウナ室は入口のドアが開いても室内温度が下がりにくい構造になっていると感じました。
 落ち着いた暗さのある水風呂は水深120cm!天井から垂れ下がる長い1本のパイプから給水される仕様で、水の中に溶け込んでいくような感覚でした。
 ととのい椅子はすべてSnow Peak製で統一されています。
 燕三条を見下ろす景色と自然豊かなととのい空間、すべてが隈研吾氏によって設計された浴室で、他では類をみない体験ができます。ぜひ実際に体感してみてください。それでは『ナイスサウナ!』

Vol.22 土壌汚染対策法について①

 現在進行中のプロジェクトでは土壌調整を行っております。今月から2〜3回分けて土壌調査についてご紹介します。
 土壌汚染とは、法令で規制される一定基準値以上の特定有害物質が地表や地中に存在しており、それを除去しないと土地の活用ができない状態のことを指します。その対策を定めた「土壌汚染対策法」は土壌汚染の可能性がある土地に対して土壌汚染状況調査を義務付け、必要な対策を行うことを定めた法律です。特定有害物質による土壌汚染の状況を確認・把握、対策、人への健康被害や環境への悪影響を防止するのが目的です。具体的な特定有害物質については、土壌汚染対策法施行規則でその種類と基準値が定められています。
 建築プロジェクトにおいて、土壌調査の対応にはかなり時間とコストがかかることがわかります。

(テントのような形状のトイレ入口)

 今回ご紹介するのは大阪城公園の中にある公衆トイレです。屋根と側面の外壁には銅板が使われ、錆びた色合いが無骨で重々しい外観となっています。パッと見でトイレとは思えないほど存在感がありました。トイレは清潔感を出すために明るい色やキレイなデザインでまとめられることが多いので、このようなデザインは衝撃的でした。パーテーションや手洗いはステンレス製で仕上げられていたので、内部も一般的なトイレは違って、工業感があって印象的でした。

(屋外の緑が見える屋根)

 トイレの入口の形状は三角形、照明も壁付けランプだけだったのでトンネルのようで思わず中に入ってしまいたくなるようなつくりでした。入口に扉はありませんが、男女動線が被らないよう外にも男女トイレの間に手洗いを配置して区切り、レイアウトに工夫を施していたので不快感はありませんでした。

(赤茶色に錆びた銅板の外壁)

 内部の通路には照明を設けておらず、各個室にある間接照明と自然光で足元を照らしていました。外壁と繋がる屋根は湾曲しており、屋根と壁の間から自然光が十分に差し込んでいたので明るさが足りないとは感じませんでした。その間からは自然光だけでなく外の植栽が見えるようになっており、屋外トイレの良さをデザインに上手く反映した公衆トイレだなと思いました。

<大阪城公園>
大坂城特別史跡地に所在する広大な歴史公園で大坂城天守閣の建つ観光名所。公園内にはカフェなどの飲食可能な施設があり、季節の自然も一緒に楽しめます。
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〒540-0002 大阪府大阪市中央区大阪城1-1
営業時間/常時開園・休園日なし
▶︎トイレ研究家・日山のInstagramはこちら! 

●4歳5ヶ月…スパイダーマンに強く憧れている

 毎日、庶民の食事の僕がオススメするのは年に数回しか食べられない特別ごはん!新鮮な肉や野菜、果物を使ったオーガニックなドッグフードは美味しすぎて一瞬で食べちゃう…幸せの時間…。

リリーズキッチン…ペットにも地球にも優しい食事を提供するイギリスのナチュラルペットフードブランド。

おすすめした人:こまろ部長

\一緒の本を読む&映画を見て気持ちを揃える/

▶︎おすすめBOOK

The Tokyo Toilet
岡田 民(著)
2023年10月
Toto出版

 THE TOKYO TOILET プロジェクトでつくられた全17棟の公衆トイレを紹介している本です。写真、図面等が記載されている他、関係者へのインタビューも収録されているので、どういう意図で設計されたのかを知ることができます。ぜひ、映画「パーフェクトデイズ」と合わせて読んで欲しいです!本は10月発売予定。

▶︎おすすめMOVIE

PERFECT DAYS
2023年 日本
監督:ヴィム・ヴェンダース
主演:役所 広司

 東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画。今月のトップ記事で日山が取り上げた渋谷のデザイナーズトイレが舞台です。主演は本作で第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた役所広司。2023年12月22日(金)より公開されるので、渋谷に行けない人も、ぜひ映画館で美しいトイレをご覧ください!

 

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