19MAGAZINE#2023.2
71名来場!自邸とパーソナルブランディング
2020年10月末にジュークが入居するマンションで火災が発生。全国ニュースになる程の大規模な火災でした。当時、同マンションの6階に住んでいた代表加藤も被災。これをきっかけに、兼ねてより計画していた自邸作りに乗り出しました。
自邸にも軸を持つ
計画地は祖父母宅跡地。幼い頃から隣に住んでいたこともあり、祖父母への愛着が深い加藤。そこで自邸の軸に据えたのは「祖父母の記憶」。祖父母宅の家具を大切に残していたので、それを使おうと決めました。中庭を向く大きなダイニングテーブルによく並んでいた祖父母。中庭から祖父母に手を振り、話しかけてコミュニケーションをとっていた記憶を思い出し、同じレイアウトで家の中心にダイニングを設けました。
(ブランディング仲間もたくさん来場)
ブランディングを家づくりに活かす
中小企業のブランディングで大切なのは「差別化」です。何が得意か?をハッキリさせることで発信力が強まり、磨かれていきます。設計は北欧デザインの専門家、施工は木造の専門家、照明は北欧の灯りコーディネーターと専門家達に依頼。加藤は見学会のアートディレクションとイベントプロデュースを担当しました。
デザインテーマは加藤が好きな「北欧」
室内、イベントは徹底的に北欧にこだわりました。譲り受けた家具以外に購入した家具は全て北欧デザイナーのもの。飾り付けで使用した小物も北欧雑貨、招待状には北欧に行った際に撮影してきたデンマークの街並みの写真を使用。来場プレゼントには北欧菓子、北欧雑貨を準備。もちろん当日の服装も北欧ブランドのマリメッコを着用しました。
(青いソファは自然とフォトスポットに)
イベント力を活かし71名ものゲストが来場
ジュークではブランディング指導の一環でイベント、展示会のプロデュースをしています。
販促、おもてなし、配布物、プレゼント、営業活動など普段クライアントさんにお伝えしていることを見学会では踏襲。3日間で述べ71名もの方にご来場頂きました。中にはわざわざ東京からいらしてくれた方も!昨今の住宅見学会としてはかなりの人数を集められたと思います。
準備の裏では注文した北欧ブランドのデスクが間に合わないというトラブルが発生。配送センターに朝取りに行きなんとか間に合いましたが「このデスクがないと完成しない!」という設計士の専門家らしいこだわりと執念を感じました。ブランディングでは詰めの10%が大切。諦めず徹底した世界観をつくり込む姿を見て、彼女が北欧専門家である所以がわかりました。
(コンセプトパンフレットも自作)
インハウスデザイン部門の作り方【後半】
前回に続き、私が地方ゼネコンにデザイナー最初の1人として入社してから退職する13年の間に、どうインハウスデザイナー部署ができて、1人→4人体制になったかを時系列で整理してみようと思います。
実録!地方建設会社のインハウスデザイン部門の作り方後編です。2人→1人→2人となり、いよいよあっという間にここから4人体制になります。
入社して5年が過ぎた頃、後輩デザイナーが入社し、しばらくは2人体制で活動していました。会社の売上も好調でブランディングを取り入れたのもこの辺り。北欧デザインのマンションリノベーションブランドを自社で立ち上げ、取材として海外出張にも行きました。海外にはよく一緒に行って、印刷物を作るための素材撮影をしました。スペイン、北欧、アメリカ。何をするにも教えながら一緒に、という感じで活動していました。
そして更に5年ほど経ち、もう1人増やそうと思う、と社長からの打診がありました。この頃はデザイン業務の傍、広告代理店、印刷会社との窓口もしており、会社全体の広告費は私が見ていました。会社の営業会議、経営会議にも出席するようになっていました。会社全体のPR、住宅、リフォーム、建築営業、不動産。各部門の販促情報を集中管理することでボリュームディスカウントの交渉をしたり、効果的なPR情報は外部から私に集まるようになっていました。
バディからチームへ
1人から2人体制となった時点でデザイン業務を分担できるようになり、私は外交役にまで手が回るようになっていました。3人体制になるメリットは、
・更に色んなことが出来る様になる
・人に教えることで後輩も成長のチャンス
と思い「いいですね!」と返事をしました。
2人時代はバディとしてなんでも2人で。しかし3人だとチームです。どう仕事や経験の場面を振り分けるか、を考えるように。この頃はもう私も入社10年だったのでそれなりの立場を、と「単独部署にするから室長やったら?」と社長から提案を頂きました。そして、会社創設以来初のデザイン・ブランディング・マーケティング専門部署「コーポレートプランニング室の室長」となりました。
3人目のメンバーは建築学部出身。CADは使えるので図面の加工はできましたし、建築系学生はプレゼンをすることが多いのでパワポも度胸も問題なし。イラストレーターは本格的に使ったことがなかったので、チラシの模写から習得。この頃はコーポレートブランディングに取り組んでいたので会社全体、住宅、リフォームのオリジナルブランド作りも私の部署が担当。チラシ、販促グッズ、SNS運用やウェブ広告作り、分析とやることはたくさんありました。OJTで社内で発生する制作物を作ってもらいながらソフトの使い方をマスターしてもらう日々。
社内報は最強のインハウスデザイナー育成ツール
2023年の今でもインハウスデザイナー育成ツールとして推奨していますが「社内報」を月一で発行したのはこの頃。建設会社は本社・支店・現場と案外散り散りです。ブランド、拠点、そして採用活動も順調で人がどんどん増えたこともあり社内報はマストに。作りながら会社のことを知れるし、ネタ集めを口実に色々な部署、支店の人とコミュニケーションも取れます。もちろん経営者とも話をするので自然と会社の方針、未来についても理解が深まります。
社内報をインハウスデザイナーが作ることは、
①毎月発行でタイムコントロール
②デザインスキルアップ
③語彙力アップ
④写真力アップ
⑤会社を深く知る
⑥発行物として形になり使われることで承認欲求も満たされモチベーションアップ
と、今書いただけでも一石六鳥。社内コミュニケーションのみならず、デザイン性があることで営業、採用と広いシーンで「社外報」としても活用でき、いいことしかありません。実際3人目の新人インハウスデザイナーは新人編集長として取材、デザイン、コピーライト、写真撮影とオールマイティで鍛えられ、デザイナーとしても広報としても活躍しました。
翌年には高校からグラフィックデザインを専攻し、大学では美術系出身の新入社員が配属。これで4人体制に。イラストレーターのスキルはむしろ我々3人より高く教えることはないので、教えるべきは会社のこと、社会のこと。社内報編集長をバトンタッチし同じようにOJTをしました。ブランディングは社内だけでは教えきれないので、全国のブランディング仲間と会ったり、イベントに参加したりと「交流と見比べ」から学んでもらいました。ブランディングは会社としては新しい取り組み。蓄積がまだないので、インプットは外に求めるのが当然です。企業でブランディングに取り組んでいる諸先輩達から教わるのが一番。今でもブランディング企業同士をお繋げしているのはこの経験からです。
ただし、ただたくさん見て経験すればいいか、というとそれも違います。「うちってこんな会社、こんなことを大事にしている」と自社のことを知らないと社風に合わないことや根付かないことに一生懸命になってしまいます。無理無駄を省くためにも、社内報でまずは会社のことを理解して、インプットも増やす。インハウスデザイナーなりたてはこれがおすすめです。
地鎮祭を行えるまでに2年以上
2/7に藤沢工業株式会社様関市物流センター新築工事の地鎮祭を行いました。ここまで来るのには2年以上かかりました。
見つけた候補地はなんと山!「土地の用途変更」「開発申請」「造成工事」などクリアしなければならない項目がまさに“山”のようにありました。山を掘削して谷を埋め、土地をつくる所からのスタート。倉庫1棟、工場3棟、合わせて延床1.6万㎡弱の計画で、各拠点に分散した工場や倉庫などを1カ所に集約し、生産効率を高めることが目的でした。
建設会社の業者選定
お施主様のご要望は建設会社数社から見積りを徴収し、安い会社に依頼すること。事業予算にフィックスさせるため、概算見積の段階で建設会社の業者選定、実施設計のタイミングで3社で協議しながら知恵を出し合い仕様を決めました。その結果、当初から頂いてた予算にランディングさせることができました。
2億円のコストダウン
収納量を変えずに全体の鉄骨量を減らし、効率的にコストダウンに成功。移動ラックを4段積みから3段に変更し、建物の高さを下げ、横幅を拡張しました。スプリンクラーはやめ、防火区画を設置するなどVE案も合わせ、工事費14億円から12億円に下げることができました。
弊社は設計だけでなく”プロジェクトドライバー”として予算管理、スケジュール管理、各業者間の調整、建設委員会のファシリテート等も担当しています。
いよいよ着工ですが、スムーズに行かないことも出てくるかもしれません。しかし、お施主様から絶大な信頼を頂いているので、その信頼を裏切ることなく、関わるすべての方が一丸となって素敵な建物を完成させたいです。今年の年末の完成が待ち遠しいです!
【NEWS】ジュークの最新ニュース
シンコーメタリコン様 工場完成@滋賀
ジューク初!「人が集まる工場 オープンファクトリー」がついに完成しました。今年5月にはオープンイベントも開催予定。イベントプロデュースも弊社が担当、様子は社内報で紹介しますのでお楽しみに!
2/7藤沢工業様 地鎮祭出席@岐阜
2020年から携わらせて頂いている藤沢工業様の物流倉庫が年内完成を目指し、いよいよ着工。岐阜市で行われた地鎮祭には市長、議員、地元銀行も出席。弊社も設計事務所を代表して、加藤と李が出席しました。
2/7-9経営支援EXPO出展@ビッグサイト
経営、経営企画向けの経営課題を解決する日本初の展示会「経営支援EXPO」に『見積Dr.』として初出展。ブースには多くの方にお立ち寄り頂きました。出展レポートは来月号の社内報で詳しく掲載&紹介します。
今回紹介する建物は大阪府大阪市にある「藤田美術館」。大成建設が設計施工し、2022年4月にリニューアルオープンしました。すぐ裏手には毛馬桜之宮公園(けまさくらのみやこうえん)があり、周辺環境と一体化させようとする意図を強く感じました。
(外に跳ねだすような勾配がついている庇)
外周部すべてがガラス張りで内部が見える仕様になっており、外と中の境界が曖昧なデザインです。それをより強調させているのがこの天井勾配。天井面が外に跳ねだすように勾配がついており、それに沿うように外の庇が伸びています。中から外を見た時に天井面が開放的に連続していくことで、ガラス壁の境界が曖昧な印象を受けました。
(庭園の景観に配慮した庇)
手の庭園も同じく勾配庇となっており、庇下から庭園を眺めると頭上にある庇の存在をほとんど感じさせません。あくまで主役は庭園であり、庇や構造体は極力来館者の印象から排除されるような設計者の意図を感じました。
(既存の蔵の扉を再利用)
内部の天井照明は必要最小限で、空調設備も床吹き出しにするなど、余計な装飾を排除し、シンプルにまとめられていました。ホールから美術館へ入室する唯一の出入口には既存蔵の扉を再利用しています。白の漆喰で塗られた広い壁面に重厚感のある扉がいきなり現れるという、異質なコントラストが内部の展示品への期待感を演出していました。
旅のおしえ
〜カーテンウォールの納め方〜
別棟の茶室と本館の間にガラス張りがあります。天井から支える部材を金属材でなくガラス2枚厚にする事で隙間から取り込む空を邪魔しないつくりとなっていました。
今月は『節分飾り』
節分飾り
伝統的な「柊鰯(ひいらぎいわし)」という飾り。平安時代から厄除けとして使われていたという記録があるそうです。
節分飾りは小正月と呼ばれる1月15日頃から節分まで飾るのが良いとされています。節分飾りのひとつに「柊鰯(ひいらぎいわし)」という飾りがあります。(上写真)柊鰯は節分に“魔除け”として使われ、柊の小枝と焼いた鰯の頭を門口(家の出入口)に挿します。柊の葉の棘が鬼の目を刺すので門口から鬼が入れず、塩鰯を焼く臭気と煙で鬼が近寄らないという平安時代から続く言い伝えです。
今回は柊鰯を現代風にアレンジ。(写真上)フラワーショップで柊とラフィアの実、シルバーブルニアをプラスして、簡単だけどちょっと差がつく節分飾り。恒例となりがちな季節行事ですが、由来や意味を知ることで季節のインテリアをより深く楽しむことができますよ!ぜひご自宅でチャレンジしてみてください。
Vol.14 建築資材が高騰している理由1・2
今回はトイレの内装デザインに着目し、HAY TOKYOの店舗内にあるトイレをご紹介します!
(手書きのようなピクトグラムはまるで工事現場のよう)
HAY TOKYOのトイレは見る箇所によってはまるで内装未完成の工事現場。トイレに繋がる通路の壁は塗装やクロス(壁紙)が施工されていない状態になっています。トイレ内は床からある程度の高さまで白いタイルが張られており、清潔感を残しつつもシンプルすぎずにまとまったデザインになっています。スポットライトで部分的に照らされた通路を奥に進むとトイレがあるので、少し秘密基地に来たような感覚になりワクワクします。手書きで書いたようなピクトグラムも施工中の工事現場を思わせます。実際の工事現場に行くと寸法の数値などが目印として壁面に描かれているのですが、まさにその目印のようでした。HAY に並ぶ商品は個性的なものが多いので、トイレとHAYの世界観が一致していて少し奇抜でも違和感はありませんでした。
(手書き寸法が残る壁面)
トイレは真っ白で清潔感のある壁仕上げが多く「シンプルが一番」と考えがちですが、トイレの中に入るのは一瞬です。常にそこに滞在するわけではないトイレだからこそ、少し奇抜なデザインやその建物・ショップのイメージを表現してもいいのではないでしょうか?
(白いタイルで覆われた手洗い)
<HAY TOKYO>
HAYはデンマークのインテリアプロダクト家具のブランド。2018年日本に初上陸。店舗デザインはスキーマ建築計画が手掛け、入口の階段が特徴的なデザインになっています。
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〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5丁目10-1 GYRE B1
営業時間 / 11:00〜20:00
▶︎トイレ研究家・日山のInstagramはこちら!
●3歳10ヶ月/ひらがなを覚え始めました
蕎麦屋「橋本屋 本店」@岩手県盛岡市
1618年創業の(400年!)盛岡の老舗・橋本屋本店さんの“鍋焼きうどん”をご紹介。毎年12月頃から食材が揃い次第始まります。なんといってもお出汁が優しく、最後の一滴まで頂いてしまいます!
鍋の具材は鶏肉、しいたけ、かまぼこ、筍、なると、ゆで卵、せりとりいくら。具だくさんでビジュアルも美しい。食後は幸せな気分に…。
『橋本屋 本店』
〒020-0015 岩手県盛岡市本町通1丁目16-6
(盛岡駅から車で6分)
おすすめした人:中村 幸枝