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19MAGAZINE#2024.8

ユタカ電業様“つなぐ”本社屋完成@下関

 2021年11月12日にキックオフしたユタカ電業様の本社・工場新築プロジェクト。7月12日にお引渡しを終え、一旦の区切りとなりました。コンセプト立案から提案、業者選定、費用調整、基本設計、実施設計、設計監理、什器選定から竣工・お引渡しまで32ヶ月間という長い期間でした。お客様をはじめ、様々なパートナー企業と一丸となって作り上げることができ、改めて御礼申し上げます。

コンセプト「つなぎ」
 新本社のコンセプトは「つなぎ」。ヒアリング時から、創業者である鈴木社長のお父様への特別な思いが社員の皆様も強く「先代とのつながりを大切にしている」という印象を受けました。さらに、鉄道通信に関わる事業をされているので「駅=拠点をつなぐ仕事」「通信=人と人をつなぐ仕事」という点からも「つなぎ」というコンセプトがしっくりきました。建物デザインに落とし込みし、1Fは『自然(とつながる)』。2Fは『社員同士・未来(とつながる)』。テラス隣接のY-GATEは『地域(とつながる)』。3Fは『外部(とつながる)』空間に決定。

1F/明るく開放的なエントランスホール

 今回の計画では事務所棟が3階建工場棟が2階建、トラックが搬入出できる庇が設けられ、その上部にはテラス・Y-GATEの3つの部屋があります。

 1Fのエントランスホールからは外の桜を眺められ、天気の良い日は外のウッドデッキに出られるよう開放可能な6枚引き戸を設置。さらにそこから地続きでつながるよう、ホールの床には本物の木のフローリングを張りました。エントランス側とカフェ側を自然とゾーニングするように曲線を描く小上がりを設置。何段か段差を設けて、ワンフロアでも空間に変化をつけました。さらに、室内でもお花見ができるような木製ベンチや自然由来の什器の選定、ハンギンググリーンを吊るす綱には下関の海を連想させるマリンロープを選定したりと、1Fのコンセプトである自然を感じられる空間にしました。

2F/創業者が見守るワークスペース

 2Fワークスペースの壁面には関東支社と同じコーポレートカラー+創業者のサインをデザイン。先代にやさしく見守られながら、未来へつながっていく空間です。ワークスペース中央には各拠点の方角を示すポールサインがあり、全国の拠点スタッフとつながっていることを象徴しています。さらに、楽しく自由な発想で打合せできるよう、木のブロックを積み上げたミーティングスペースや左右にスウィングするチェアなど遊び心のある什器を選びました。

 Y-GATEは地域と企業をつなぐ空間として運用予定です。工学系の学生が使える3DプリンターLABOや全世界とつながるYoutubeスタジオ、多くの本を収容して学びにつなげるLibraryRoomなど、ブランディングチームを中心に現在企画中。

3F/桜モチーフを多用したVIPルーム

 3Fは社内勉強会や大人数の視察セミナーにも対応できるホール、ゲスト専用のVIPルームがあります。これらをつなぐ通路はミュージアムラインと命名し、片側の壁には会社の創業から現在までが一目でわかるヒストリーウォールをデザイン。反対側には多業種に渡る製品情報を展示予定。社外の方が一番多く訪れる3階は外部とつながり、発信していくためのフロアに仕上げています。

 ユタカ電業様を象徴する「つなぎ」が社屋の随所にちりばめられた本社・工場がユタカ電業様の発展の一助となっていくことを期待しています。

 4月の開催に続き、7月にデザインスクール@東京を開校しました。岩手、埼玉、東京、広島、山口と全国からご参加頂き、スクールコンセプト「デザインに長けた会社になって一段上に行こう」を皆で取り組みました。入社後広報、採用、企画などの業務の延長線で独学でデザインまで担当していた社員の方も多く、改めて「デザインと何か?」と原点に立ち返る体験をして頂きました。(デザインスクールの背景と岩手開催レポートはこちらから。)


 当デザインスクールではデザインスキルを実践的にお伝えするものではなく、デザインをするにあたっての心掛けや、自身の会社にとって意味のあるものをデザインするコツをお伝えしています。よってデザインを使いこなしたいデザイナーだけでなく、デザイン初心者の方、ご自身ではデザインしないが、デザイナーにデザインを発注する側の経営者や上司の方も参加OKです。

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参加者同士ディスカッションしながらデザインを詰めるワーク

 参加者の多くは、入社後不安の中で何が正解か分からないけれどここまでデザインをしてきたインハウスデザイナーさんたち。スクールの初日には参加者と同じく、入社後からデザインに取り組み、今では立派に活躍するデザイナーをゲスト講師に招き、自身の経験を語って頂きました。東京会場でゲスト講師として話して頂いた福島さんは、彼女が新入社員だった6年前に社会人インターンとして私がお預かりしてデザイン指導をした元生徒さん。コーポレートブランディングに取り組む過程で、インハウスデザイナーがいる事は社内外の発信力が強まる&スピードがアップするため推奨しています。

 彼女の講義を聞きながら、岩手でお預かりしデザイン指導していた時期を懐かしく振り返りました。インターン後もデザインの赤ペン先生として添削を続けてきましたが、あっという間に社内制作物だけでなくパートナー企業の会社概要をデザインするまでに成長しています。彼女は建設会社のインハウスデザイナーですが、今までにない職を会社に作り、定着させることで、既存の社員と新たな人種との化学反応を起こす効果もあります。魅力的な組織風土づくりにも一役買う中小企業のインハウスデザイナーという仕事。

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デザインに入る前の「なぜ」を徹底的に考え組み立てるワーク

 かく言う私も13年間建設会社で初のインハウスデザイナーとして働いていました。最初は私1人だったデザイナーも、13年後には4人の専門部署にまでなりました。みんな新入社員として入社し、その後本格的にデザインを仕事としてデザイナーに成長していました。採用や売り上げアップ、会社の知名度アップに確実に貢献できるデザイナーの育て方を実体験で私自身が経験済みなので、ぜひ多くの中小企業にそれを味わって頂きたいです。

 二泊三日の集中スクールでしたが、10月@岩手、11月@東京は1日の就学時間を長くして一泊二日verにして開校します。頭がパンパンになるかもしれませんが、ぜひ興味がある方はご参加ください!

【NEWS】ジュークの最新ニュース

ユタカ電業様竣工式に出席@下関市
 7/23に山口県下関市でユタカ電業様本社・工場の竣工式が行われ、加藤・李・青木が出席。2021年スタートした3年に渡る建設プロジェクトです。9/21には地域、関係者向けのお披露目パーティーを開催。<施工事例ページはこちら>

7/24-26デザインスクール@東京
 SAKURA STATION TOKYO(ユタカ電業関東支社)にてデザインスクールを開校。岩手〜山口まで5社から10名の方にご参加頂きました。次回は10月@岩手、11月@東京で開校予定。<デザインスクールお申込はこちら>

新プロジェクト@岩手・新潟・山口・福岡・沖縄
 今年春〜夏にかけ新プロジェクトが全国で続々とスタート。サービスブランディング(中央開発)コーポレートブランディング(三條金属、サンヨーコーポレーション、喜多村石油)建設(日本山羊)と進行中!

【INFORMATION】

●8/16-20 企画展「コーポレートブランディングと建築展」@盛岡(教育会館ふれあいギャラリー)
●8/30 岩手経済戦略会議(岩手経済同友会主催)加藤登壇@盛岡グランドホテル

 今回紹介する建物は福岡県福岡市の「福岡市美術館」。日本近代建築の巨匠・前川國男が設計し1979年に完成。2019年にリニューアルオープンしています。外壁タイルと内部空間の調和がとれた素敵な建物です。

艶のあるカッパーブラウンが美しい外観

 建物を見た時の第一印象は「ファサードの存在感の無さ」でした。多くの建物は建築物の顔となるファサードを作り“正面”をわかりやすくしますが、この建物にはそういった顔となる部分の判断が付きませんでした。これはあくまで推察ですが、アプローチ広場にいくつかオブジェが配置されており、その展示物にフォーカスを当てるため、あえて建物に意匠性を持たせなかったのではないかと考えます。

外壁色に合わせた館内の配色

 かといって建物にインパクトがないかというと決してそうではなく、むしろ外回りがシンプルな分、内部の意匠性が際立っています。外壁タイルの釉薬のカッパー色に合わせて、床材・天井照明・手すり・椅子なども同じトーンの配色が施されています。

温かみのあるコンクリート天井

 天井にはR形状のコンクリートが打たれており、仕上がり面を手作業で荒らして砕石を表に出すことで、無機質なコンクリートに人の手を加えた温かみを感じられます。
 建物が持つ存在感の強さを想定した上で来館者がここにくる目的からどんな体験をしてもらいたいか?という意図が屋内から屋外まで感じられる名建築でした。

旅のおしえ
~細かい部分までの意匠設計~
 右の写真は外部の手すり袖壁と外壁との間をクローズアップした写真です。その間に入れた柵に意匠性を持たせており「こんな細かい部分まで凝ってデザインをしているのか」と細部までこだわる設計の重要性を改めて思い知らされました。

 今回は東京・渋谷区17カ所の公共トイレを世界で活躍する16名の設計士・デザイナーが個性的なデザインに生まれ変わらせた「THE TOKYO TOILET PROJECT」の中 から、裏参道公衆トイレをご紹介します。
 このトイレは「THE TOKYO TOILET」シリーズの中でも日本の伝統的な建物の雰囲気を異素材で再現しており、「Apple Watch」のデザインに携わった世界的に有名なプロダクトデザイナーのマーク・ニューソンによってデザインされました。

日本の伝統建築を思わせるトイレ外観

 丸っぽいフォルムと銅製の屋根が特徴的で、トイレのある高架下に馴染みながらもとても存在感がありました。トイレを囲む石垣と“茅葺き”風の屋根が日本の伝統建築を思わせます。屋根は本物の銅板が使われているので「緑青(ろくしょう)」という徐々に青緑色に変化していく現象が起き、経年と共に公衆トイレの雰囲気が変わっていく様子を楽しめます。外国人デザイナーだからこそ日本の良さをよく理解し、それを上手くデザインに落とし込んでいるなと感じました。

内部は明るいグリーンに

 壁はコンクリート、屋根には銅が使われ全体的に無機質な素材で仕上げられている外観とは対照的に、内部は明るいグリーンカラーでまとめられて利用しやすい雰囲気です。

シンプルで清潔感のある個室内

 個室内は間接照明やダウンライトで照らされているので壁面や天井に照明器具の凹凸がなく、意匠性はもちろんのこと清掃面からみても優れたデザインでした。

<裏参道公衆トイレ>
東京メトロ副都心線北参道駅またはJR代々木駅から、それぞれ徒歩数分の距離にあります。近くに行った際はぜひ寄ってみて下さい。
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〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷4丁目28-1
営業時間/24時間営業
▶︎トイレ研究家・日山のInstagramはこちら! 

 今回ご紹介するのは福岡県北九州市のSTARBUCKS門司港駅店です。大正時代の待合室の雰囲気に鉄道や製鉄などの歴史と地域性を取り入れた空間になっています。

蒸気機関車のナンバープレートをイメージしたサイン

 デザインのコンセプトは「storyteller」。復原された駅舎や鉄道とともにコーヒーを通じて地域の語り部として、門司港の歴史や先人たちの情熱を伝えていきたいという想いが込められているそうです。

クラシックな駅舎内

 店舗入口のSTARBUCKS COFFEEのサインは蒸気機関車のナンバープレートをイメージしており、まるでタイムスリップしたようです。店内は旧三等待合室の雰囲気をそのままに再現されており、ロマンチックでクラシックな気分を味わえます。テーブルの足元や天井の鉄骨は役目を終えた九州の鉄道レールが再利用されており、スターバックスファンだけでなく鉄道ファンも嬉しくなる場所ではないでしょうか。

再利用された鉄道レール

 一部のテーブルや椅子は地元の木工所が県産木材を使用してオリジナルで制作。古き良き時代を懐かしむ昔の写真なども展示されており、門司港の歴史を振り返る貴重な体験を楽しむことができます。
 悩んでいる時、仕事をしたい時、読書をしたい時、1日何回でも行ってしまいたくなる空間、そこが「MY STARBUCKS」。

<スターバックスコーヒー 門司港駅店>
国の重要文化財に指定されている門司港駅舎内にあり、つくりが美しい居心地のよい空間になっています。ぜひ優雅で贅沢な時間を過ごしてみてください。
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〒801-0841 福岡県北九州市門司区西海岸1丁目5-31
営業時間 / 8:00-21:00
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Vol.32 天井クレーンの種類

  天井クレーンとは天井に近い高さを通るクレーンです。一般的な「クラブトロリ式」はレールに対応するように両側の壁に設置し移動できるガーターを渡します。さらにその上にトロリ(台車)でクレーンを設置。レールを伝って垂直移動、レールに沿ってガーターごと水平移動、ガーターの上のトロリの水平移動が可能で、レールとガーターが通っている範囲は面状どこでも移動できます。
 クラブトロリ式には一組のレールに1本のガーターを通すシングルクレーン、2本のガーターを通すダブルクレーンがあり、シングルよりもダブルの方が重い荷物を運ぶことができます。しかし、構造が複雑になる分コストが高くなるのが注意点です。
 トロリを使わず、電動ホイスト(巻き上げ機)などを使用するホイスト式、天井梁に取り付けたレーンから直接クレーンを吊り下げるサスペンション型など様々な種類があります。

\一緒の本を読む&映画を見て気持ちを揃える/

▶︎おすすめBOOK

覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰
池田 貴将(著)
2013年5月
サンクチュアリ出版

超一流アスリート、俳優、経営者から愛され続ける50万部突破のベストセラー。吉田松陰が残した言葉を現代人にもわかりやすく変換した人生哲学書です。今月号のトップ記事、ユタカ電業様がある山口県は数々の歴史の舞台。松下村塾にヒントを得て企画した地域を巻き込む学び「寛村塾」も新社屋で始まります。

▶︎おすすめMOVIE

長州ファイブ
2006年 日本
監督:五十嵐 匠
主演:松田 龍平

歴史を知ればその土地がさらに楽しめる。9月の19CLUBブランディングツアー@下関・小倉に参加するなら長州藩の話もぜひインプット!「長州ファイブ」と呼ばれる、伊藤博文・井上馨・井上勝・遠藤謹助・山尾庸三の激動の運命を描く歴史ドラマ。山口県民に感じる逞しさの一端を知ることができるかもしれません。

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